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飛騨牛偽装問題から考える 偽装社長達はホントにバカなのか

飛騨牛偽装問題から考える 偽装社長達はホントに懲りないバカ者なのか?

飛騨牛ブランドの偽装疑惑の食肉卸小売業「丸明(まるあき)」(吉田明一社長)の事件。

中日新聞の「社長「客には分からん」 焼き肉用2種類販売



同社が偽って販売していたのは「飛騨牛赤身焼肉用」で、100グラム当たり350円と500円の2種類。飛騨牛は肉質評価のランク付けで3−5等級のみが表示でき、2等級以下の和牛を交ぜた場合は「飛騨和牛」などとしか表示できない。


 従業員によると、350円用は少量の3等級ばら肉に、質の低い2等級もも肉を交ぜていた。500円用では、4等級もも肉に「さし(霜降りの脂肪)」が多い2等級の肩ロースを入れていたという。


 男性従業員は「吉田明一社長は『(2等級でも)いい部分だから、かさ上げしてもいいだろう。客には分からへん』と指示した」と話す。前工場長(37)も「工場に運び込まれた2等級の肉が店頭で3等級以上の飛騨牛と交ぜられた」と証言している。

ミートホープの事件、吉兆の事件と同じ構図が続いています。





これらの社長さん達、一見、ホントにバカではないのかと思えてしまいます。これだけ、偽装問題が表面化されて、社会問題になっているのに、同じ事を繰り返す。





しかし、ミートホープの社長さんにしても、丸明の社長にしても、初代であれだけの企業規模にした社長さん。バカで、一代で100億企業は絶対に作れません。バカでないとすれば、何がこのような事件を繰り返させたのか?





丸明の社長について、インタビューなどを観ると、100億までの成功要因が、環境の変化に伴い、失敗要因に変わってきたことを気づかなかったのではないでしょうか?「過去の成功要因」に囚われすぎたのではと思います。





TVのインタビューなどを観ていると、100億までになる成功要因の中心は、以下の3つのように感じました。



  1. 良いモノをより安く→腕の見せ所は、「偽装」の技術
    飛騨牛というものに着目し、上手にブランド化。それを安く販売していくという事で伸びたのでしょうが、そこには裏が・・
    良いモノを安くだと儲からないという事から、「良いモノのように見せたものを安く」という事で、ユーザーを急成長。


    そこには、「食肉業者の腕の見せ所は、粗利をとれる偽装技術」という間違ったプロ意識。そして、それを支える技術。(ミートホープの社長の混ぜ方の技術は天才的と言われていましたよね)


    私も、15年くらい前、数人の食肉業者から聞いた話ですが、みなさん同じような話をされていました。ある社長さんは、ホテルに牛肉を入れていたのですが、「輸入牛を和牛」として販売していると自慢されていました。ホテルのプロの料理人にも見破られないような「輸入牛」を仕入て、加工するのが、「腕の見せ所」だと言うのです。儲かる、食肉業者は、この技術が優れている経営者だと、業界では言われていたそうです。その話を聞いて以来、常に、私は疑いながら、肉を食べるようになりました。


    まぁ、ある意味「騙すことができるから、安くできる」という事だったんでしょうね。
  2. 社長の方針の徹底→自分だけを信じ人の言うことを聞かない
    当然、そのような事を言っていると、社員やパートの中で苦言を呈する人達がでてきます。そこで働いている人達の中にも、生活には不安を感じるが、正義感から勇気を出して「社長、これはマズイと思いますよ。やめましょうよ」と言ってくれる人達がいます。


    通常の一般人であれば、そのような声に耳を傾けます。しかしこれらの経営者は、「食肉業者の腕の見せ所は、粗利をとれる偽装技術」という信念を否定されるような声に耳を絶対に傾けずに、信念に忠実に経営を行っていった。信念に疑問を感じる人の発言は、一切無視して、経営を行っていった。


    だから、急成長できていったのでしょう。
  3. よく働く社員→恐怖でコントロールする
    「自分の方針や信念に、疑問を持つ社員がいれば、徹底して無視したり、いじめたりする。あるいは解雇していく。
    恐怖により、社員をコントロールしていく事で、社員に懸命に働かせていく。


    社員は「悪いことをしているな」とは感じながらも、「社長に逆らえば怖い」という気持ちと、「社長に従っている限り、いい給料はもらえる」という気持ちが交差しながら、社長の指示に従っていったのでしょう。

これらの他にも成功要因はあったかもしれませんが、この3つは丸明さんの100億になる急成長の成功要因だと思います。(誉められた成功要因ではありませんが、これで伸びてきたのでしょう)丸明の社長も、これには自信を持っていたのではないでしょうか?だから、この3つは徹底的に行っていった。





しかし、この成功要因は、永久に成功要因たりえるものではありません。時代が変われば、企業を取り巻く環境が変わる。そうなれば成功要因が失敗要因になる事が多々あります。

  • 食品偽装などを業者がやるワケないという消費者の常識。
  • マスコミ・行政の食品偽装への無関心
  • 密告がカンタンにできない社会環境
  • 社員は、社長の言われたことを我慢しないといけないという労働観

これらの環境があったから、「成功要因」たりえたと思うのです。しかし、この環境が大きく変わりました。

  • 食品偽装が続いたことでの、食品への監視の強化
  • 食品偽装に関してのマスコミの高い関心
  • ネットの普及により、社内密告がカンタンにできるようになった
  • 生きる為に、我慢して働く事はないという意識を持った労働者の増加

こう環境変化すると、先ほどの成功要因は、逆に失敗要因になってきます。しかし、初代で100億までにしてきた「成功法則」は、やすやすと変更はできません。ある意味、成功者であれば、あるほど、成功要因を徹底して極めていったからこそ、他よりも大きな成長ができたのです。





私達が学ぶべきところは、「一度、成功を手にしたら、その成功ルールが永久に続くものだと思ってしまう」というところです。その成功が大きければ大きいほど、「成功要因が失敗要因に変わったという事実を認めたくない」という心理が働くのでしょう。成功に溺れてしまい、戦略の基本を忘れてしまってはいけないという事でしょう。

  • 自分の成功要因が何かを整理する
  • 成功要因が有効である環境を整理する
  • その環境が変化していないかをチェックする
  • 環境変化しているのなら、それに合わせて成功要因を見直していく

戦略の基本の一つですが、うまくいっている時ほど、忘れてはいけないものですね。それと、社会倫理に反する事はうまくいっても、長くは続かない。