モチベーションは楽しさ創造から

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iPhoneが日本で生まれない理由。ジブリから学ぶ天才中心型組織の条件

なぜ日本ではiPhoneが生まれないのか?そのような独創的商品が最近でなくなったのか?最近、私なりに、いろいろ考えている。





iPhoneの中には様々な革新的なアイデアが詰まっている製品であることから考えると、一つの仮説は、社員のアイデア力の違い。しかし、この仮説は間違いのように思える。現場のアイデア力は、日本企業も負けてはいないと思う。日本は、古くはQC活動などの時代から現場の意見を吸い上げる文化が基本にあるからだ。





もう一つの仮説は、天才中心主義の組織ということ。

アップル社にあり、日本企業に少なくなってきたのは、天才を中心とした組織運営だ。

商品が複雑化し、様々なネットワークの組み合わせが必要なた現在だからこそ、一人の天才の世界観、コンセプトにより、商品を統合的に作っていく事の重要性が増しているからではないか?





日本にもかっては、天才を中心とした組織が数多く存在した。代表的な人が本田宗一郎を中心にしたホンダではないだろうか?

「交通麻痺で、部品を新潟まで届けることができないのなら、なぜ、飛行機をチャーターしてパラシュートをつけて届けにいかないのか?」と怒鳴ったというような、ある意味、気がふれているエピソードで溢れた人だ。





しかし今、日本を見渡したとき、極めてこんな天才型のリーダーは少なく、組織を集団としての組織力(集合天才を目指す企業)を生みだすリーダーばかりになった。もちろん、組織力が悪いわけではない。これは、天才に頼っては、組織は不安定になってしまうという理由から、このような方向になってきたという背景もあるからだ。しかし、天才型が生みだす商品に比べて、今日本で生まれている商品は、遥かにインパクトの弱い商品になっているのも事実だ。





一人の天才の思い込み、情熱の力強さ、統一性が生みだすパワー。この凄さを、アップルを見ると感じる。今日は、アップル社が初の300ドル台にのせ、時価総額アメリカ最高のエクソンもービス社も射程距離圏というニュースもでるほど好調だ。


ティーブ ジョブスという天才と、彼が生み出す独創性で統合された商品、サービス、営業方法で、この世界1、2位の時価総額企業が運営されているという事実。





ジョブス氏の暴君ぶりは、様々なところで紹介されているので、ここで言うまでもない。聞き分けのいい、理解のあるリーダー。首尾一貫して、合理的な判断を常にしていくようなリーダーのもとでのこのような発展は分かるが、決してそうではない。





  • 暴君のもとでも、優秀な人材が集い、高いモチベーションで仕事をし、結果として素晴らしい仕事をしているのはナゼなのか?
  • 日本で、そのような企業が減っているのがナゼか?
  • 或いは、日本でそのような天才中心型組織でうまくいっている企業にはどんな秘訣があるのか?

それを勉強したくて、スタジオジブリのプロデューサー鈴木さんの[仕事道楽」という本を読んだ。

仕事道楽―スタジオジブリの現場 (岩波新書)

仕事道楽―スタジオジブリの現場 (岩波新書)

言わずもがな、スタジオジブリは天才中心型の組織だと思う。宮崎さんと高畠さんという天才を活かしていくための会社として、もともと設立されているのである。この組織が20年くらい成長し続けているのは、ナゼか?という事に大変興味がある。





昨日、NHKノーベル賞もとられた小柴さんのインタビュー番組があった。その中で小柴さんの奥様が言われていたのだが、彼が若い時は、様々なものが家の中を飛んでいたそうだ。器や、味噌汁の入ったお椀が飛んできて、壁にはワカメがついていたそうだ。それだけの激しさ、感情の爆発、専門分野への集中がある意味、天才の特色だ。それがあるから、人とは違う天才的な発見なりアイデアが浮かんでくるのかもしれない。(周囲の人はタイヘンだ)





天才とは、人とは違う思考回路、発想法、環状の構造を持っている。だから一般人と違い天才なのだ。

天才は、富士山に例えられる。遠くで見るのはとても美しい。しかし、近くにいけばいくほどゴミが目立つ。遠くにいた時はあこがれの人が、それが一緒に近くで仕事をすると「頭のオカシナ人」「気が触れている人」と感じてしまう。天才と付き合うというのは、普通の人が思っている以上にとても厄介な事だ。

しかし、ジブリはこのような天才を中心組織が回っている。

組織を回す為に、天才の周囲にいる人は、どのように考え、立ち振る舞いをしているのか?私には大変興味があった。





天才中心型組織は、厳しさに持ち溢れた組織だと思う。天才のワガママ、思い付きに右に左に振り回され、感情の爆発に付き合っていく大変さは並大抵ではないと思う。

論理性が大切にされるようになった世の中で、理不尽さに満ち溢れ、天才が繰り広げる理不尽さを受け入れていく組織の秘密。人の秘密はどのようなものか?プロデューサーであり、一番、その理不尽さに直面し、なおかつ猛獣使いのように、天才と折り合いをつけ、ビジネスを成功させている鈴木さんとは、どのような人物なのか?という事に興味あがあった。





この本を読んで、天才中心型組織を発展させる条件が分かったような気がした。

天才だけいても、組織は広がらない。天才と、パイプになるリーダー。それと、天才の理不尽さにも耐え、その才能を信じ誠実に仕事をしていく社員達。この3者の組み合わせにより、天才中心型組織というのは成り立つのではないか?

そして、今日本において天才中心型組織が増えない、減ってきている理由は、天才の不足ではなく、天才と一般を結びつけるリーダーの不在。そしてその才能を信じ誠実に仕事をしていく社員達というのが不足しているために、天才中心型組織が生まれにくい世の中になっているのではないかと、私は感じた。

  • 天才を最後の最後まで尊敬し続ける。色んな事、一般の人の想像を絶することもあったりするようだが、それでも絶対的に天才を尊敬し続ける人材。
  • 天才を怖がらずに、彼も失敗することを理解し、無茶なアイデア等に関しては、上手に聞き流したり、気づかない間にカバーしていく主体性を維持していく人材。
  • 天才の周りで起こる、様々なアクシデント、思いもかけないような出来事を、「この職場は、いろんな事が起こって退屈しないなぁ。面白いなぁ」と感じることができる人材。
  • 天才の行うことに関して本質的には絶対的に成功する事を信じ、メンバー達にもそれを信じさせ、枝葉の部分において起こる天才の間違いや、思い付きに関しては上手に聞くフリをして、そのミスをカバーする対策を進めて、メンバー達のモチベーションが下がらないようにケアしていく人材。

鈴木さんは、まさにこんな事ができる人だ。彼がいるから、ジブリは組織としても発展しているんだろうと、なるほどと思わされた。







天才と付き合うのは、骨が折れることだと思う。

思い付きの連続だし、言ったことは忘れているし、朝令暮改だし、感情的になると誰も止めることができないほど爆発する。

そんな状況でも、「仕事が何よりも道楽」という鈴木さん。これほど、毎日、いろんな事が起こる会社なんてないとそれを笑って受け止めることができる鈴木さんの楽しさ創造力の凄み。(この厳しい環境の中働いているのに「仕事道楽」というタイトルの本を書くという凄み。ホントに尊敬する。)

まさに、どんな状況の中にも楽しさを生み出していく、楽しさ創造力の権化のような人だ。





これから、日本企業が世界と戦っていこうとすれば、「天才という異才をどう活用していくか?」が重要になると思う。

天才が生み出す画期的な商品、販売方法等がなければ、世界と対抗できないと思う。

だからこそ、今、天才を周りから支える鈴木さんのような能力を持った人。楽しさ創造力を持った人が求められるのではないだろうか?