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「働くモチベーションの低下は、賃金と評価が原因」という話は、底が浅すぎる話ではないか?

賃金制度運用見直しを 08年度労経白書(フジサンケイ ビジネスアイ) - Yahoo!ニュース

厚生労働省は22日、2008年版の労働経済白書労働経済の分析)を閣議報告、了承された。バブル崩壊後に企業が導入した業績・成果主義的な賃金制度がうまく機能していないと疑問を投げかけ、評価基準の明確化など制度運用の見直しを求めた。パートなど非正規雇用の増加については、労働者の仕事に対する満足度を調査。満足度が低下させていると分析し、正規雇用の拡大を求めた。



労働意欲(労働のモチベーション)が低下しているという問題は、とても興味深いですが、その原因が、賃金と評価という分析は、あまりに浅い、結論ではないでしょうか?マスコミの論調も、ほとんどが上と同じような論調です。これが分かったところで、何も問題解決は進まないと思うのです。その奥が分かってこそ、具体的な対策が打てると思うのです。





労働意欲は、賃金が大きな影響を与えるというのは、否定できないとは思うのですが、この話は昔からあった話です。労働者が満足いく賃金をもらっていたのは、バブル期の数年くらいではないでしょうか?





賃金に問題があると考えた場合でも、それは賃金水準の問題なのか?賃金分配の問題なのか?ということもあります。





賃金水準は、企業の中では労働分配率という問題です。企業は、稼ぎ以上には給料を払えません。トヨタなどの業績の良い会社であれば、「労働分配率を上げて、給与水準を上げろ。儲かっているのだから、派遣をなくせ」などとという話もOKかもしれません。しかし、これを言っちゃうと、多くの日本企業、特に中小企業などは倒産ラッシュになってしまうでしょう。それらの企業では、今の労働分配率損益分岐点ギリギリの会社が多いのではないでしょうか?賃金水準が低い会社であればあるほど、労働分配率が高い(賃金水準が高い企業は、労働分配率が低い)という矛盾を抱えた状況でしょう。





そのような労働分配率の高い会社に、給与水準が低いから、給与を上げろといっても無理な話。抜本的問題は、その企業の「利益を稼ぐ力」が低いという事にあります。企業経営の観点から言えば、高付加価値のビジネス、高い効率のビジネスができていない事が解決できなければ、賃金水準の問題は解決できない。





一方、労働者の観点から考えれば、もっと「高付加価値」「高い効率」の仕事ができるような能力開発を行っていく事ができなければ「賃金問題」は解決していかないという事になるのではないでしょうか?「高付加価値の仕事ができる能力開発」をもっと促進するような制度、学校教育からそのような能力開発を行っていくような教育改革を考えていくべき話ではないでしょうか?(真地面にコツコツ働くのは当たり前。それだけでは稼げない時代です。)





単に労働意欲が低いから、「賃金を何とかしろ」とわめいたところで、多くの企業は「ない袖はふれない」という話で終わってしまいます。抜本的なところの問題解決を、労働白書は提言する必要があるのではないでしょうか?(もちろん、高い給料を払えない会社は、社会的存在価値はないんだから、潰れてしまえなどという暴論を言う人もいるかもしれません。しかし、それでは日本中、失業者で溢れた状況になってしまいます。)







また、もう一つの評価で考えた場合も、評価と賃金の連動(賃金配分への影響)という問段なのか?評価項目の問題なのか?、評価活動の問題なのか?ということもあります。





評価と賃金の連動は確かに強まってきています。賃金分配の考え方が、年齢や勤続に比例して配分するという年功序列型のやり方から、各人のガンバリや勤務態度、成果を賃金に反映していこうという成果主義型の考え方に変わってきています。この部分は、業種や職種によっても大きく考え方は異なるのでしょう。個人での仕事よりチームワーク重視の仕事を行う企業であれば、年功序列型がいいとは思います。しかし、そればかりで現実が対応できるかというと・・





企業の競争力を支えているのは、多くの企業において20%の人材です。彼らが、ユニークな商品、優れた技術、職人技などを生み出しています。これらの20%の人材は、どこの企業でも欲しくて欲しくてたまりません。これらの人材は、世界的な争奪戦です。だからヘッドハンティング会社は儲かってます。そんな時代、年功序列の賃金体系だけで、戦う事ができるかと言えば無理でしょう。会社の中から20%の人材がいなくなってしまう事になるのです。





「ごめん、うちの会社はみんなで給料を平等に分け合うんだ。よそと同じレベルの給料は出せない」と言ってしまえば、その会社が好き、職場の仲間が好きだとしても、多くの人はその企業から離れていくことになるのでしょう。だから、特別の業績を上げている人には、それに報いる賃金配分の方法は、今の時代、残さざる得ないと思うのです。この部分も、オカシイとは指摘できないと思うのです。(しかし私は、働くモチベーションを賃金に頼るというのは邪道だと思っています。賃金は上げていく必要があるものだと思いますが、賃金をニンジンのようにぶら下げて、モチベーションを掻き立てるのは、限界があると思うからです。)





問題は、評価項目や評価活動の方が問題なのではないでしょうか?特に、私が最近の労働意欲の低下問題の中で、身近に手を着けることができるものが、「評価活動」だと思います。





評価項目は、完璧なものなど、どちらにしても作る事はできません。誰かが納得するものは、誰かが不満を感じるものです。だから、できる限りの納得性を保つために、できる限りたくさんんの人に議論に参加してもらいながら、評価項目を作る工程の透明性を高めていくしか、最大限の納得がいく評価項目は作れないでしょう。しかし、それでも全員が納得できる評価項目にはならないとは思います。





そこをカバーするのが評価活動です。評価活動は、大きく「各労働者の実態把握(モニタリング)と評価」と「評価の伝達」があります。労働モチベーションの低下は、この2つが、うまくできていないのが、最大の原因になっているように私には思えます。「労働者の活動を正しく把握せずに、適正に評価していない。そして、それを労働者の意欲喚起するように伝える事ができていない」ことが、労働意欲の低下の最大の原因になっているように思えるのです。





これらを行っているのは、マネージャー達です。最近、フラット化などという話で、マネージャーの人数がどんどん減ってきています。一人のマネージャーが把握しておくべき、部下の数が増えています。それだけでなく、今、多くのマネージャーは現場仕事の責任・負担が大きくなり、マネージメント業務の比率が下がっているのではないでしょうか?(プレイングマネージャーのプレイングの比率が高くなり、マネージャーの仕事が減っています。)





その影響もあり、彼らの部下一人当たりに対する「実体把握・評価と評価伝達(コミニケーション)」の時間が、どんどん減ってきていると思うのです。それが評価に対して、労働者に不信感を抱かせる結果になっているのではないでしょうか?即効性のある部分で、できる事として、このマネージャー層の仕事の改革(役割分担、業務量も含めて)や、マネージャー層の能力アップ(部下へのモチベーションアップ力や部下支援力の向上)に優先的に取り組む話だと思うのです。





これって、私の直感でしか過ぎないことをパラパラと書いてみました。私が知っているのは、一部の企業の実体にしかずぎず、全体像を正しく掴んでの話ではないかもしれません。だからこそ、労働白書などのデータに期待するところは大きいのです。賃金と評価が原因で、労働意欲が低下したなどという浅い分析ではなく、何に手を打っていけばよいかという事が分かるようなデータ収集と分析を期待したいと思います。「労働意欲の低下」とマスコミが騒ぐだけだでは、、物事な何も動き出さないと思いますから。