モチベーションは楽しさ創造から

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ルーチンと非ルーチンが混在している仕事でのモチベーション

ダニエルピンクの新著。モチベーション3.0という本を読みました。

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

その中で、どのような事が書いてあったかの詳細は、また別の日に書こうと思いますが、今日は、その中で、現在、考えている事をまとめてみようと思います。それは、企業の中でのモチベーション2.0と3.0の共生ということです。(これはダニエルピンクがこの本の中で言っているのではなく、私が最近考えていることです。)





モチベーション1.0とは、「食う、生殖するという生き残る為に、やらなければ」と思うモチベーション。

モチベーション2.0とは、「アメとムチで、やらなければ」と思うモチベーション

そしてモチベーション3.0とは、「内発的動機付け(自ら、やりたいという感情)」から生まれるモチベーション

一言で、モチベーション3.0という本は、「これからの時代は2.0から3.0の時代になりますよ。」という事を書かれた本。





その中で著者のダニエル・ピンクが語っている中で、フレデリックテーラーの科学的管理法とモチベーション2.0の関連について述べています。





フレデリックテーラーは、1911年に産業界に革命をもたらします。科学的管理法というコンセプトです。

それまで、仕事は職人が支配していました。例えばバッグを作るには、バッグ職人に丁稚に入り、何十年も修行に入り、職人芸を身につける。その職人芸を身につけた者だけが、バッグを作ることができるという事が常識でした。





テーラーは、ある意味、この職人芸を否定します。「どんなに凄い職人芸と言ったって、それを分解してみれば、単純なルーチン業務で構成しているだけだ。職人芸を分解して、単純ルーチン化し、素人に少しの訓練を加えればできる」という科学的管理法というコンセプトです。





第2次世界大戦を契機に、資本主義世界においては、この科学的管理法が当たり前のように浸透していきます。マニュアル化、機械化、見える化カンバン方式など、「科学的管理法をベースにした遺伝子のビジネスコンセプト」も次から次に生まれてきました。

科学的管理法により資本主義社会・先進国の生産性は大きくなり、先進諸国においては、1900年代まであった「食べられないという貧困」はなくなっていく事になりました。私は、個人的には「科学的管理法」は、21世紀最大の発見だと思っています。





ピンクがこの本の中で述べているのは、実は、科学的管理法というコンセプトには、仕事観、モチベーション観というものもパッケージになっていたという事です。



職人芸を否定して、ルーチンを各人に割り振り、専門的にそればかりを毎日行わせるという事になれば、どうなるか?

当然、「仕事は退屈で、つまらないモノになる。そして、仕事は退屈でツマラナイものだから、労働者はサボりたくなるものである。

だから、マネジメント層は、労働者がサボらないようにしっかりと監視をしていかなければならない。

そして、労働者が言われたとおりのことをしっかりやればアメを。サボっていればムチを与えなければいけない。そうすれば、退屈なルーチン業務を労働者にしっかりと行わせることができ、高い生産性を上げることができる。」という仕事観。モチベーション観です。





このテーラーの科学的管理法と仕事観、マネジメント観、モチベーション2.0で、確かに20世紀、私達は大きな生産性向上を果たし、豊かになったのです。そして、共産主義との冷戦も、テーラーの考え方を徹底して導入した資本主義の勝利に終わりました。





しかし、冷戦後20年。世の中が大きく変わってきました。資本主義社会、先進国だけが独占していたテーラーの科学的管理法は、世界中に広がることになったのです。今までそれとは無縁であった、中国やインド、ロシア、アフリカ諸国にドンドン広がっていきました。そして、今、世界中の生産性が向上し、豊かになってきています。





以前、私の先輩コンサルタントが言っていたのを覚えています。ちょうどソ連崩壊から2〜3年後だったかと思います。「これから中国は変わるよ。今は、3流品しか作れない。しかし、僕らが入って、経営や科学的管理法をドンドン今、教えている。きっと20年後、中国は日本と同じレベルのモノを作ることができるようになるよ。」その際は、「まさか?」と思っていましたが、ほぼ彼が言っていた状況に近い事が現実の物となりました。





世界中が豊かになる事は素晴らしい事なのですが、問題は先進国の企業達です。今まで独占していた科学的管理法を、安い人件費の国が取り始めたのです。科学的管理法は、「職人芸を素人でもできるようにルーチン業務化していき、誰でもができるようにしていく」というコンセプトですから、安い人件費の国がこれを取り入れていけば、高い人件費の国は太刀打ちできません。私達から後進国が仕事を奪いはじめました。





そして、今、私達先進国は新しいパラダイムシフトを求められている。「科学的管理法」では、できないビジネススタイル。それが、非ルーチン業務を付加価値の中心に置いたビジネスです。マニュアル化できない、個人のアイデア、クリエィティビティを全面に出したビジネスにしていかなければという事です。後進国と科学的管理法に基づく競争では、人件費から考えても厳しい。先進国の中で企業が勝ち残ろうとすれば、ハイコンセプトのビジネス観が必要となるということです。(ハイコンセプトの考え方は、資格以上に必要になる!格差社会で生き残る為の5つの能力を参考にしてください)





そして、社員にクリエィティビティを発揮させようとすれば、モチベーション2.0のアメとムチは逆効果であると、ピンクは主張しています。「やらされている」と思うと、クリエィティビティは低下していくと言うのです。ハイコンセプトの世界で生きていこうとすれば、モチベーション2.0から決別し、モチベーション3.0の「自ら、やりたい!」と感じるようなやり方にチェンジしていかなければならないと。





私も、この主張にはまさに同意なのですが、一つ引っ掛かりが存在します。モチベーション2.0はルーチン業務には有効であり、モチベーション3.0は非ルーチン業務に有効。ここまでは分かるのです。しかし、実際に企業の仕事を見てみると、どうか?





非ルーチンばかりをやっている会社は少ないものです。逆に、ルーチン業務ばかりをやっている会社も、日本においては今時は減ってきました。多くの会社は、非ルーチンとルーチンが混在している状況です。個人で見ても、そう。非ルーチンばかりしている人は少なく、ルーチンと非ルーチンが混在している人のほうが多いのではないでしょうか?これが、モチベーションを複雑にしているのではないか?





例えば、歯科技工士という仕事があります。同じ仕事の中においても、ルーチンと非ルーチン業務は混在している。

診断データに合わせて、技工物の設計書を検討・・非ルーチン

設計書に合わせて90%までの形成を行う・・ルーチン

患者さんの実際状況に合わせて仕上げを行う・・非ルーチン

といった具合です。





この問題を解決する一番簡単なやり方は、ルーチン業務が主体な人と、非ルーチン業務が主体な人とを分けていくという考え方です。

キャリアパスとして、最初は、ルーチン業務主体の仕事だけをさせる。そして、それが完全にこなす事ができるようになれば、非ルーチン業務担当者になれるチャンスを与える。当然、職場の中でも、呼び名、ユニフォーム、就業規則体系も変えていく。ルーチン業務者には、管理スタイルとして科学的管理法とモチベーション2.0で、監視、ルール、マニュアルを徹底し、基礎をたたき込み、アメとムチを与えていく。

そして、非ルーチン業務者に昇格するにと、管理スタイルは、結果に基づく仕事をさせていき、モチベーション3.0で管理していく。





同じ職種の中でも、こんな2柔構造ができてくる事になるのかもしれません。

ホントに、これでいいのか?私の中ではまだ答えはでてきていません。