モチベーションは楽しさ創造から

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『ドラマOL日本』を見て 中国ビジネスマンの「悲壮感」に勝つために私達が必要なこと

昨日、OL日本というドラマを見ました。なかなか考えさせられるドラマでした。



主人公(観木 ありさ)は、総務部総務課に勤めているOL。主人公はかなりできるOLなのですが、他の社員はダラダラ働いている社員ばかりの組織です。


その会社では、既に経理部、人事部の仕事の大半は中国にアウトソーシングされており、今度、役員会で、総務部総務課も中国にアウトソースしていく事を決定。中国にアウトソースする前に、総務課の仕事をマニュアル化する目的で、中国人OL2人が来日してくることになった。そこから始まるストーリーです。





職場では、中国人OLと日本の社員・派遣の対立がすぐ起こります。そこで日本語タイピング競争で決着しようという事になります。中国人が負けたら中国に帰り、日本人が負けたら中国人に仕事を教える。結果は、中国人の勝利。





主人公は、「できるOL」として他の社員から尊敬されており、実力には自信を持っていたのですが、日本語のタイピングで中国人に負けた事でプライドは粉々。





そこで、中国人を派遣した会社の社員に聞くことになります。

「彼女は、日本語のタイピングを習ってどれくらいになるんですか?」

「3ヶ月です。」

「たった3ヶ月で。そんなこと・・」

「あなたはホンキで努力したことことってありますか?たぶん、あるでしょう。だけど、そんなの中国では努力のうちには入らないということです。彼らはホンキで生きていかないといけないですから。」





このようなシーンは、今、実際にいくつかの日本企業の中で見られる光景ですし、今後さらに増えていく光景ではないでしょうか?





このやりとりを見ていて、ある意味、日本人の不幸を感じました。「悲壮感」を持つことができない不幸です。

中国の人、或いは、昔の日本人は、「セルフモチベーション」がカンタンにできる環境があると思うのです。



私を含め、今の日本人は、

  • 「ある程度、努力をすれば、底辺になることはない。」
  • 「一生、フリーターやニートをしていても、餓死するというレベルにはならない」
  • 「両親の面倒など、抱えるモノもないので、自分の事だけ何とかすればいい」

こんな社会の中で生きています。だから必死に努力しなくても生きていける。

責任もそれ程重くないので、たいして頑張る必要なんてない。だから目標や夢なんかなくても生きていける。

また、困ってもいないので、夢や目標なども作りにくい。


漠然とした将来への不安はあるとしても、今現在に対しては大きな悲壮感を持ちにくい社会になりました。マズローの欲求5段階で言えば、1段階目の「生存の欲求」に関しては、たいがいの人は満たされています。



しかし、戦後すぐの日本人や、今の中国人は、この「生存の欲求」も満たされていない人が大勢います。

  • 「必死に努力をしなければ、底辺(食べるものも苦労する状態)から抜け出す事ができない。」
  • 「努力しなければ、どんどん追い抜かれていき、下の方になっても誰も助けてはくれない」
  • 「底辺から抜け出さなければ、悲惨な状況のまま一生過ごすことになるかもしれないという危機と隣り合わせ」
  • 「家族の面倒、期待など、自分の事以外に多くのものを背負っている」



今の日本人と、戦後すぐの日本人や今の中国人の最も大きな違いは、「悲壮感」だと思うのです。彼らは、生きる事に必死です。悲壮感は、「私達を行動に駆り立ててくれる」大きなエネルギーの一つです。彼らは「環境によって、日本人より遙かに大きな悲壮感」を感じています。だから、何とかしようと「必死に努力していこう」という気持ちに必然的になりやすい。





戦後すぐの日本人や、今の中国人は、「環境によってもたらされる悲壮感」が大きなエネルギーになっています。

幸か不幸か、今の日本人は、「環境によってもたらされる悲壮感」は彼らに比べると、遙かに小さなものしかありません。私の世代でさえ、生まれた時から日本はそれなりに豊かであり、「真の悲壮感」を感じる事はあまりありませんでした。





まして、今の若い世代の人達は、「悲壮感」により与えられるエネルギーが更に小さい。この事はハッピーでもあるのですが、今の若者が、今後もハッピーであり続けるには難しい状況に直面していると思うのです。





「悲壮感というエネルギー」が小さな今の日本人がこのままいけば、「茹でカエル現象」になってしまう危険があるのではないでしょうか?(「茹でカエル現象」とは、熱いお湯にいきなりカエルを入れると、熱さに反応してお湯から抜け出そうとするが、水の中にカエルを入れてじっくり火で暖めていくと、気が付いた時には、カエルはお湯の中から抜け出ることができずに死んでしまうということ)





気づいたときには、茹でカエルのように、「アジアの労働者が、懸命なる努力の結果、いつのまにか私達に追いつき、仕事を奪っていた」といった事態になるのかもしれません。ドラマ『OL日本』のような場面が、自分に降りかかる事で、はじめて気づくという事では遅すぎます。





そうならない為には、今の日本人に合った「やる気を刺激してくれる、悲壮感に変わるモノ」を築いていく必要があると思うのです。





正直、多くの日本人は、中国人のように「高い悲壮感のエネルギー」を持って働く事は難しいでしょう。バブル崩壊期。日本はとても悲惨な状況でした。そんな時代でさえ、多くの日本人は、それほど「悲壮感を感じる」ことはなかった。やはり、豊かになりすぎたのです。





「もっと悲壮感を持て!」とか、「これからは中国人に君の仕事は奪われるんだよ!」とか叱咤激励をしたとしても、それほど悲壮感は感じてくれないと思うのです。豊かになりすぎた日本人は、ホントに焼け野原になった状況になるまで、「真の悲壮感(高いエネルギー)」を感じることはできないのかもしれません。実際に、失なってみないと人はピントこないのでしょうね。





悲壮感をエネルギーにした勝負なら、中国などアジア諸国と勝負したら、今の日本人は負けるに決まっています。叱咤激励しても、「中国人並の悲壮感」を感じさせる事ができないとすれば、私達は、「悲壮感」に代わる、「やる気を生み出す新しいパラダイム」を作っていく、違う土俵で勝負していく必要があるのではないでしょうか?





私は、「悲壮感」に代わる、新しい「やる気を刺激するモノ」は「楽しさ」だと思います。悲壮感というエネルギーを中国人のように持てないのであれば、「楽しいから働く」というエネルギーで勝負する!





「悲壮感で頑張っているのではない。楽しいんだから頑張る必要はない。楽しいから、夢中で仕事をしているんだ!」という状況です。「楽しいから夢中に働く」というエネルギーは、悲壮感に勝るとも劣らないパワーを私達に生み出すのです。





今、各人が真剣に「楽しさ創造力」を身につける努力をしていく時代に入ったのではないでしょうか?『モチベーションが上がるワクワク仕事術』や『部下の「やる気」を育てる!』で述べている楽しさ創造力がアジアのビジネスマンと勝負する際に、カギになってくると思います。

マジマネ5 部下の「やる気」を育てる!    めざせ!仕事のプロ モチベーションが上がるワクワク仕事術


このような新しいパラダイムを日本に作っていかなければ、ホント、「悲壮感に勝る」中国やアジアの労働者に、私達の仕事は、ドンドン乗っ取られていくんだろうな・・

そう感じさせてくれる、ドラマでした。