モチベーションは楽しさ創造から

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iPhoneと格差社会と秋葉原連続殺人

iPhoneと秋葉原連続殺人。一見、関連性のないような2つの出来事が、格差社会というキーワードで繋がったように思えました。




iPhone3Gの製品発表が先日、スティーブ ジョブスからありました。内容はご存じの通り。iPhone、大幅値下げで日本上陸 3Gに対応


iPhone3Gは、現在の企業間競争の分かりやすいモデルケースだと思います。昨年、発表されたiPhoneは、今までにない画期的なアイデアが詰まった製品。欧米で600万台販売したヒット商品。しかし、これをもっと普及させようとする、第2ステップでは価格が問題となる。もっと安く提供できれば、もっとたくさんシェア獲得ができる。そこで第2ステップの今年、昨年の価格の約半額の199ドルで販売をしていこうとしています。現在の企業間競争は、iPhoneのように、「画期的なクリエィティビティ性」と「価格満足」の両面が実現できなければ勝ち残れない時代に入っています。





iPhoneのような製品を作ろうとすれば、企業には4種類の人材が必要になります。A.スティーブ ジョブスやiPhone開発スタッフのようなクリエィティブクラスの人材。

B.そのクリエィティブクラスを補助し、助けていくホワイトカラークラスの人材。

C.クリエィティブクラス、ホワイトカラークラスが作った仕様を、ルーチン化し、日々ブラッシュアップしていくルーチンホワイトカラーの人材(ルーチン業務を行う人の中でも格差が広がっています)

D.決められたルーチンを、できるだけ早く、正確に、たくさん、安く行っていくルーチン業務の人材

この4つ人材の絶妙な組合せが、あのような魅力的な製品を作り出したのだと思います。

と、同時に、はっきりとしたピラミッドを造りだしているようにも思えます。






経営者の立場に立って、これらの人達への人件費配分を考えていくとしましょう。

企業が支払う人件費には限界があります。高い人件費は、価格に転嫁されていくので、競争力を失わせる結果に繋がります。高い価格は、顧客満足度を下げる形になるからです。できる限り安い人件費率を実現する事で、価格競争力を維持していこうとします。では、この4種類の人材に、どのように人件費配分をしていくのでしょうか?





iPhoneの競争優位を生み出している、源泉となる人材は誰かというと、当然、クリエィティブクラスの人材となります。彼らの頭脳流出が起こらないように、彼らへは高収入が支払いをしていく事になります。彼らの市場価値は高く、引っ張りだこだからです。彼らを流出する事は、企業の根幹を揺るがす事になるからです。そこで、優先的に彼らへの人件費配分が決定されていきます。





しかし、クリエィティブクラスの頭脳流出が起こらないようにするには、金銭面だけを満足させるだけで十分ではありません。彼らをサポートする環境も整備していく必要がでてきます。その環境の上で最も大切になるのが、クリエィティブクラスの仕事をサポートするホワイトカラークラスとルーチンホワイトカラーの人材達。この部分にも、気が利いた人材を配置させる必要が出てくるのです。そうなると、ホワイトカラークラス、ルーチンホワイトカラークラスの人材達にも、それなりの高い給料を支払う必要がでてきます。





すると、ルーチン業務人材への人件費予算はあまり残りません。じゃ、派遣でなんとからならないか?アウトソーシングで何とかならないか?海外生産で何とかならないか?と人件費削減の方法を考え始めます。

クリエィティブクラス、ホワイトカラークラス、ルーチンホワイトカラークラスに高い給料を支払ったツケが、ルーチン業務人材への給料にしわ寄せがくるのです。





ルーチン業務は、徹底してコストを抑える。社員から、パート・派遣。パート、派遣が使いにくくなれば、海外からの労働者。それでも対応できなければ、海外への生産移転。ルーチン業務のコストを抑える方法はいくらでもあります。





このような考えで経営をしていく企業はどんどん増えていくでしょう。顧客に満足してもらう製品を作っていこうとすれば、ユニークなアイデア、優れた技術、割安感を感じる価格の製品を作っていく必要がでてきます。そして顧客満足を追求していけばいくほど、このジレンマに突入していくことになり、格差を大きくさせているのではないでしょうか?







そんな中、厳しいコントロールのもと、ルーチン業務ばかりを行っている労働者は、やはり怒りを持つでしょう。「いくら真面目に頑張っても、給料はほとんど上がらない。未来が見えない」という気持ちになるのも分かります。この追いつめられた気持ちや疎外感が、最近の連続殺人に繋がっているという分析もあります。(格差社会に不満があるから、人殺しをしていいなんていう事には絶対にならないと思うのですが・・)





たぶん、これから格差是正に向けて、パート、派遣の保護という名目で、彼らの待遇改善を法律的に何とかしようという政治的な動きもでてくると思います。最低賃金の引き上げや労働制約の強化などです。しかし、そうなれば企業側は、ルーチン業務を海外に持っていくだけでしょう。国内で行われるルーチン業務がなくなり、ルーチン業務人材を守る為に行った事が、逆に首を絞めることになるだけでしょう。





では、社会安定の為に、クリエィティブクラス、ホワイトカラークラス、ルーチンホワイトカラークラスに給料を下げるとどうかというと、そうなれば彼らが海外に流出していく事になる。そうなればコアコンピタンスの低下を招き、企業競争力がグーンっと落ちていくでしょう。今でも、たくさんの日本の優秀な頭脳がシリコンバレーなど海外に流出しています。





「じゃ、この格差問題を放置しておいてよいのか?」というと、それではマズイと思います。ルーチン業務を行っている人材の不満はどんどん高まり、秋葉原事件のような極端な例ではないけど、小さな暴発がいたる所で起こってくるような気がします。





この問題の一つの解決策の視点が、「チャンスの平等」「チャンスの提供の拡大」だと思います。昔は、4つの人材が一つの会社の中に存在しました。その為、ルーチン業務クラスから、ルーチンホワイトクラスやホワイトクラス、クリエィティブクラスへの移動のチャンスがたくさんありました。頑張って努力していけば、ルーチン業務からの脱却はできたのです。某大手鉄鋼会社でも、高卒で入社した将棋が得意だった方が、上司から気に入られて、最後は総務部長にまでなったなんて話もよくありました。しかし、今は、このチャンスさえも、ルーチン業務クラスの人達には与えられていないのが現状ではないでしょうか?





チャンスも与えられなければ、モチベーションなど沸くわけがありません。彼にも、夢とチャンスを与えていかなければならないのではないでしょうか?





活力ある社会を実現していこうとすれば、チャンスの平等は欠かせないと思うのです。今のように、一度、ルーチン業務ばかりを行うと、ずっとその仕事を行う事しかできないままの一生しか見えないというような、ピラミッドの固定化が最大の問題のような気がします。





もっと、どんどんルーチンホワイトクラスやホワイトクラス、クリエィティブクラスの仕事ができるチャンス、登用のチャンスを広げていく。これは、企業にとってもプラスだと思うのです。チャンスを生かすことで、クリエィティブクラスの仕事ができる人材がどんどん輩出されていくようになれば、企業の競争力も高まっていくのです。





どよんとした空気を一層する為にも、「チャンスの平等」という事をもっと多くの会社が人事制度に取りいれていって欲しいものです。




PS

私の本、「モチベーションが上がるワクワク仕事術」これからも応援よろしくお願いいたします。

めざせ!仕事のプロ モチベーションが上がるワクワク仕事術

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