モチベーションは楽しさ創造から

自分自身のモチベーションアップ、仕事を楽しくする方法から、部下・上司・顧客のモチベーションアップのヒントとなるノウハウ、コラムをまとめたブログです

どんな人でも教育すれば育つのか?

新入社員が入社してくる4月。多くの先輩達が、新人の教育をされていると思います。教育を任された新人が優秀な人であれば、ラクなのでしょうが、現実、会社にはいろんな人がいます。決して、優秀な人ばかりではありません。優秀なレベルどころか、第3者の私たちから見ても、酷い社員もいます。

  • 挨拶や敬語もろくにできない社員
  • 何度叱られても、単純な同じ失敗を繰り返す社員
  • 遅刻を繰り返す社員

等々。


教育ということを考えた場合、社長などとよく議論になるのが、「我が社では、どんな人まで教育は可能なのか?」ということです。「人は、教育をすれば変わるのか?」という事とも関わってくるテーマですね。


これには、いろんな考え方があると思います。
私は、「どんな人も、教育をすれば変わる。育つ」と思います。
ただし、「育てる能力を持った人が、必要な時間を投下できれば」という前提条件が存在すると思うのです。


「教育投下時間」とは、企業側の視点から考えれば投資です。誰かが教育担当をする必要があり、そこには人件費が発生する。育てる能力が高い人ほど、その人件費も高いものになります。(外部に委託するにしても同じです。)また、教育の受け手にも、人件費を払う必要がある。すぐに収益に跳ね返ってくるのを期待はしないにしても、中長期的に収益に貢献してもらう為の投資ということになる。


大事になるのが、我が社は「一人前になるまでに、一人当たりに、どれだけの教育投資」までなら認められるかということです。これは、正直会社の体力によって違うと思うのです。財務体質の強い企業と、今年の経営が厳しい企業とは、投入できる「教育投資顎」が違ってくる。そこで、大事になるのが「我が社は、どれくらいの教育投資対効果」ならOKなのか?という基準作りです。1人前になってもらう為に、最大100時間教育投資が可能な会社もあるでしょうし、500時間投資可能な会社もあると思います。あなたの会社はどうでしょうか?ここが、企業内教育と、学校教育や家庭内教育と違うところです。


教育投資対効果は
・教える側(企業側・教育担当側)の能力
・教えられる側の能力
の2つによって変わってきます。


教える側の能力が低ければ、「投資対効果が低い教育」しかできませんし、逆に、受講する側の能力が低ければ、当たり前に教育しても「投資対効果が低い教育」にしかなりません。
大事なのは、現在の自分達の教育能力と、投下可能時間を合わせて考えた際に、「どれくらいの能力」の人であれば、教育投資対効果が合う人材なのか?をハッキリさせることは重要だと思います。


例えば、あなたが坂本龍馬で、年間300時間、新人にしっかりと教育ができるようでしたら、かなりレベルの低い人材でも、動機付けができ、教育していくことが可能だと思うのですが、実際、そんな状況ではないと思います。きちんと人を育てる会社を作ろうとした場合、自分達の育成能力・モチベーション能力(自分の会社の能力)と、投下できる教育時間を合わせた人材像を採用していくことも大変大切になると思います。


そこで出てくるのが、教育能力が低い中小企業の社長がよく口にする、「即戦力」という言葉です。教育しないでも、明日から戦力になるということです。しかし、「即戦力」を求めれば求めるほど、実際は人が育つどころか、腐ってしまうケースが多い。
この間違いは、「どんなテーマが教育するのに能力と時間を要するのか?」という事を見誤っているからだと思います。


「即戦力」という視点で人を見ると、明日から教育せずともすぐに使える「スキル」「すぐに使える資格・知識」がどれくらいあるか?という視点ばかりを着目してしまうことになります。しかし実は、スキルや資格、知識については、教育投資対効果が高いものです。ある程度の教育能力の人が、ある程度の時間さえしっかりかけていけば、能力アップという成果は確実にでてくるものです。


逆に、「即戦力」という視点で人を見た場合に見逃しがちになるのが、「躾」とか「マナー」です。「躾」と「常識」いう当たり前の能力は、最も教育投資対効果が悪い分野です。
「躾」と「常識」とは
・挨拶
・礼儀
・目上の人への接し方
・整理・整頓を行う
・決められたルールは守る
等のなんていう当たり前のこと。
しかし、これができない人も以外に多いのが現実です。スキルなんていうヤツは、育成能力が低い上司が教えても、それなりに覚えていきます。しかし、「躾」と「常識」は当たり前すぎて、教えることがとても難しい。難しいだけでなく、その定着までには時間と手間が大量にかかります。


それは、自分の子供の躾なんていうのを考えたら想像ができると思うのです。うちの子供も、「朝起きたら、必ず、親より先に自分から挨拶をする」ということを口酸っぱく、何度も何度も躾をして、やっとできるようになりました。時間からいうと恐らく、50時間はこれだけのことに投下したと思います。同じことを、部下にやろうとすれば、採算があいません。子供だから採算度外視でやれることです。


このような「躾」なり「常識」は、できたからといって利益は生み出しませんが、できなければ損失を生み出すことになります。そして並の育成能力・モチベーション能力の人が、多少教育時間をとった程度では、なかなか成果がでてこないテーマなのです。大人に、このような事を教えていっても、「そんなことくらい知っているよ」「自分はできているよ」なんて思ってしまい、なかなか素直に話を聞いてくれなかったりするので、子供への教育より厄介だったりします。(だから、TVでも活躍されるような伝説のマナー講師みたいな人がいるのかもしれませんが、ホントに教育投資対効果が悪いテーマなのです。)


教育する担当者の能力があまり期待できない。教育する時間がとれないという状況であればあるほど、即戦力を狙わず、「躾」と「常識」の教育が不要な人材を狙ったほうが、損して得取れという話になるのだと思います。(オマケで、即戦力となるスキルや知識がついてくる程度で考えた方がいい)


教育ということを考えた場合、どう教育していくかということだけを考えるだけでなく、
・自分達の教育するチカラ、モチベーション能力
・教育に投下できる時間
・教育する相手の抱えている課題(教育テーマ)、能力
という3つのバランスを考えて、教育戦略、採用戦略も合わせて考えていくことが、「人が育つ会社」を作るには大切になるのではないでしょうか?(実際に、自社の教育投資対効果に合わないテーマを課題に抱えている人材への教育は、ムダになっていくケースが多いものです。)