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地頭力のカギ。抽象化思考と具象化思考の使い分け

地頭力を鍛える」、読みました。コンサルティング業界では、昔から、「彼は学歴はさほどでもないけど、地頭が良いよね!」なんて言っていました。しかし、きちんと、その地頭って言うことを定義したものはありませんでした。

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」

この本では、地頭を良くするには、3つの思考力を身につける必要があると主張しています。

  1. 仮説思考 (少ない情報しかなくても、まず結論について仮説を立てて、物事に取り組む)
  2. フレームワーク思考 (物事に取り組む際には、全体像をまず描く。全体像を描いた後に、部分に焦点を絞っていく)
  3. 抽象思考 (物事は、単純化してしまうと、似たようなものばかり。特殊性などは少ない。他の成功例を抽象思考でルール化をして、それを自分の問題に当てはめて考えてみる)

確かに、この3つについては徹底的に、鍛えられます。





今回、マトを絞って考えたいのが、抽象思考。仮説思考、フレームワーク思考については、またいつか触れていきたいと思います。





私達、コンサルタントが商売になるのも、この「抽象化能力」のお陰かもしれません。現場の知識に関しては、コンサルタントよりも現場の人の方が豊富です。私達が提供している多くの知識は、今まで私共の成功してきたクライアントや成功事例から、他の企業でも使えると考えた「抽象化されたルール」や、抽象化された経営ノウハウです。クライアント企業の問題に合わせてその「抽象化された経営ノウハウ」を、具体的に展開していき、解決策を提案しています。





しかしこの「抽象思考」。一般のビジネスマンはあまり関心の高いものではないようです。昔から、「その話って、抽象過ぎて、使い物にならない」などと、抽象的という言葉はどちらかというとイメージが悪い言葉です。一方、「だんだん、具体的になってきたね。」とか、「その提案、とっても具体的でいいよ」など、具体的という言葉は、イメージのよい言葉になっています。具体化能力は、相手に考える手間を省かせ、合わせて分かりやすさを提供していきます。だから反応がいいのかもしれません。





ビジネスマンから、「私、今、英語力を高めています」という話は聞いても、「私、今、抽象化能力」を高めているんですという話はあまり聞いたことがありません。実際、この抽象化能力に関してのエントリを今までいくつか書いたのですが、あんまり反応が良くありませんでした。(例えば、スポーツを楽しみながら、自分のモチベーションを掻き立てる仕組みを作るは抽象化思考について書いたエントリですが、ブクマはほとんどありませんでした。)





今現在、「抽象化能力」を高めようとするビジネスマンは少ないのかもしれません。「地頭力を鍛える」のベストセラー化は、そんな現状を打破するキッカケになるのかもしれませんね。実際、「抽象化能力」は様々な問題を今、引き起こしていると思います。





例えば、日本の中小企業において、システム導入がうまくいかない一つの原因がこの「抽象化能力」にあると思っています。中小企業は、システムにコストをかけれませんから、どうしてもパッケージを検討せざる得なくなります。しかし、このパッケージ導入が、多くの中小企業でうまくいっていないケースが多いのです。





理由は、中小企業組織の抽象化能力なのです。パッケージ製品は、どんな企業にも使って貰う事が前提に開発されている為に、データ項目名は、抽象化されています。例えば、名前1、名前2、名前3とかいうヤツですね。一方、中小企業の現場で使われているデータ項目名は、責任者名、営業担当者名、サービス係名などという具体的なヤツ。当然、パッケージを使おうとすると、この2つを合わせていく必要がでてきます。





しかし、中小企業でシステム導入をしていこうとする場合に、今現在、行っている仕事の抽象化がされないまま導入をしていこうとされると、パッケージに対して不満が現場から湧き出てきます。結果、パッケージ導入しても、かなりのカスタマイズ費用などが多額に必要になってきて、システム導入の足かせになってしまう。





中小企業に限らず、大企業でも同じかもしれません。ERPパッケージがなかなか日本では成功していかない理由も、欧米に比べて、日本企業の抽象化能力の低さが原因のような気がします。アメリカでは、当たり前になっているEA(Enterprise Architecture)も、抽象化思考の典型なのですが、これの普及も日本ではなかなか進んでいってませんよね。





抽象化思考を、「複数のことをまとめて一般化していく」こと。抽象化とは、例えば、「りんご、みかん、いちごがあります。これを一言でいうとなんというでしょう?」という話。答えは、「フルーツ」





具象化思考とは。「一般的なものを、具体化して展開、分解していくこと」。例えば、「フルーツと言えば具体的には何?」という話です。





この2つを状況に合わせて自由に使い分ける力が大切になってくるのです。それぞれ、強いところと弱いところがあるのです。





例えば、

社長が経営方針を浸透させようといった場合はどうでしょう。これは抽象化能力の出番です。経営方針など、全社共通で常に意識させたい事は、「顧客満足の徹底」などというシンプルでなければ社員は覚える事ができません。一つの言葉で、全社のベクトルを作る必要がでてきます。





今度は、経営方針について、営業部長さんがそれを部門単位に理解してもらおうとするとどうでしょう。具体化能力の出番です。社長が作った経営方針を復唱するだけでは浸透などされません。「顧客満足」という経営方針があるのであれば、営業部で言うところの「顧客満足」とは具体的になんなのか?を営業マンに理解できるように咀嚼していく力が必要になってきます。





抽象化思考と具象化思考の特色という事をまとめてみました。

抽象化のメリットは

  • シンプルになる(枝葉が落ちて本質がよく分かる。全体像が理解しやすくなる)
  • たくさんの人で情報の共有化がしやすくなる
  • 費用が少なくてすむようになる (前述のパッケージ導入のように、既存の成功モデルを活用できる)
  • 時間がかからない (コミニケーションスピードが上がる。既存のものが利用できるので、導入スピードが速い等)
  • 応用がきくようになる  (成功事例から、一般ルールを作り、それを自社に当てはめるというような応用)

一方具象化のメリットは、

  • 即時実行ができる
  • 誰にでも分かり易くなる
  • 具体的な議論ができる

私が行っているサービスでも、本やセミナーは、抽象化したものを提供するサービスです。お客様の方で、抽象化した情報を、自分の状況に合わせて具象化し、展開して頂く必要がでてきます。多くの人に提供できることから、安く提供できます。(本やセミナーを効果的に活用されている人は、この具象化する作業を必ずやっています。ただ読んだり、聞いただけでは、「一般化されたルール」が記憶にかすかに残るだけで、意味がないのです。「学んだことを実際に自分がするとなると、どうなるのだろうか?」という具象化作業が成果に繋がる学習のカギになってくるのです。)





逆にコンサルティングの場合、抽象化されたノウハウをお客様に会わせて、具象化し展開したものを提供するサービスです。お客様は、具象化する作業が必要ありません。すぐにノウハウの活用ができていきます。しかし、一度に多くの人には展開できないので、価格は高くでしか提供できません。





それぞれ違ったメリットがあるのです。抽象化能力と具象化能力の2つのメリットを理解して、使い分けていく事が重要になってきます。





この事は、個人に限る話ではなく、組織も、どれだけこの抽象化と具象化を自由に使い分ける事ができる力を保有しているかは、収益に大きな差をもたらします。

「抽象化能力」の成熟度を私は4つのランクに分けてみました。みなさんの組織の「抽象化成熟度はいかがでしょうか?

  • ランク1 抽象的なことから具体的なことを考えられるし、具体的なことも抽象化してコミニケーションが通じる組織
  • ランク2 抽象的な話し(大まかな方針)をすれば、すぐに具体策が考えられる組織
  • ランク3 作業原則(作業方針)を教えれば、すぐに具体策が考えられる組織
  • ランク4 作業方法レベルを教えなければ理解できない組織

当然、ランク1であれば、一言、上司が指示すれば、物事が進む組織ですから効率が良い。社員さんの方も、イチイチ小さな事まで指示されるワケではないので自由に仕事ができるのでモチベーションも高いです。





逆にランク4のような組織であったら、上司も指示すすのが大変。部下も上司の指示に嫌気がさしてきます。ランク4のような会社は、作業スピードは遅いし、モチベーションも低いという状況になってしまうのです。

抽象思考と具象思考を上手に使い分けるかどうかはは、「コスト」「時間」「モチベーション」などを大きく左右していきます。

ランク4のようにならない為にも、組織メンバーの抽象化能力の向上は、とても大事なテーマだと思いますね。





抽象化力、具象化力の高め方は、また今度、ご紹介していきますね。

PS
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