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それでもコムスン・グッドウィルは、なぜ成長できたのか?

先週末にブログで取り上げた時点から、だいぶんコムスン問題は落ち着いてきた。
コムスンはかなりの問題を未だ抱えているようだが、今回はグッドウィルグループの成長戦略について、私なりに整理していこうと思う。

私の友人の人材派遣会社の社長が面白い話をしてくれた。「グッドウィルグループは、いい商売してますよ。うちと比べると粗利率メチャクチャ高いし。」
彼と話している際に、グッドウィルグループの成長戦略は、「センターピン戦略」(彼が教えてくれたのだが)、「わらしべ長者戦略(現在の戦いの中から、次の戦いのキーを調達していくという考え方)」の2つの言葉がキーになって構成されているような気がした。

「センターピン戦略」というのは折口氏が以前、テレビに出て盛んに言っていた言葉だそうで、「ビジネスにはセンターピン」というものが一つある。それを倒せば、全てがうまくいく。だから、それを倒すことだけに集中していけばいいのだという考え方である。わらしべ長者戦略」とは、一つのビジネスをすると、何かを得る事ができる。その得た何を武器に、より大きな市場を開拓していくという考え方である。この「センターピン戦略」と「わらしべ長者戦略」をベースに折口氏の経営を検証していく。


まずは、折口氏がブレークしたのは、ジュリアナ東京ヴェルファーレといったディスコビジネスである。彼は、そこで見事に「センターピン戦略」を実行した。ここでのセンターピンは、「女性客」である。流行るディスコ、クラブの条件は、「たくさんのいい女性客が店に来ること」と考えた彼は、その獲得を徹底した。無料チケットを配りまくってでも「いい女でお店が溢れる状況」を作っていった。すると、「美人の女性客が男性客を呼び、いっぱいの男性客が女性客を呼ぶ」という善循環が回るようにしていった。見事な戦略である。ディスコビジネスが成功するに伴って、一つの「資産=武器」を手にする事になる。「客」である。

通常のビジネスマンであれば、「客」という資産を手にしたとき、その客に次に何を売ろうかを考えるが、彼は別の視点=より大きな市場を視野で考える事ができた。ディスコに遊びに来る客も金は必要だ。金がないと遊びにも来れない。だから金を稼ぐ場を作ってやろうと!そして、遊びに来ている客に、より大きな市場開拓に手伝わせる事になる。


人材派遣ビジネスだ。グッドウィルの派遣の仕事は、「アルバイト感覚の派遣」が多い。(モバイルドットコムのように、アルバイト感覚で人を集めていく)派遣ビジネスは最初は、売る商品である「人の募集」が大変だが、グッドウィルには、ディスコの客やディスコ関連で得た人脈という資産を有効に利用できたのだろう。

そして、人材派遣会社でもセンターピン戦略を上手に実行した。「スピード」である。一般的には、「企業が派遣に求めているのは、人の質である。」と考えがちになる。しかし、折口氏は、多くの企業が派遣会社に求めているのは、「質ではなく、空いた穴をいかにスピーディに埋めるか」であると考えたのだろう。これは、特定企業のニーズをついていた。


「アルバイト感覚」の若者を携帯で集めていき、企業側が仕事に穴が空いた時、ネットか電話で相談したら、24時間対応ですぐに人を手配してやるという「センターピン」を倒す事に徹底していき、業界内での地位を確立した。そして人材派遣ビジネスでも「資産」を手にする事ができた。「人の手配ノウハウ」と「顧客開拓ノウハウ」である。


この2つのノウハウを武器に、新たな「わらしべ」を目指して巨大マーケットの介護ビジネスに「コムスン」を設立し乗り込んでいく。ここでも「センターピン戦略」として、事業所を全国に作ってNO1シェアを取るという戦略を徹底していく。派遣で培っていった「顧客開拓ノウハウ」と「人の手配ノウハウ」を武器に。しかし、この「センターピン戦略」では、公的な仕事の場合うまく機能しなかった。結果は、今の現状を見れば明らかである。
今回は、介護ビジネスの「センターピン」を誤って捉えたからであろう。

普通、戦略のセンターピンは理屈で分かっていても、それを徹底するのには勇気がいる。今回は挫折したとは言え、改めてこう経営戦略的観点から見てみると折口氏の戦略と戦略実行の徹底力、突破力は凄いなと感じる。ただ、理念や社会的責任について深い思いがあればと残念に感じる。


日本人は、強い者が弱くなってきたら徹底して叩くのが得意だから、次は本体のグッドウィルを取り上げて、派遣搾取だと伝えるマスコミも出てくるのだろう。グッドウィルやモバイルドットコムのビジネスモデルが格差社会を生み出していると言った具合に。
折口氏には、今回のコムスンの失敗を糧に、人材派遣では真に派遣労働者と企業の両方に役立つ理念(派遣労働者の暮らしのアップとその為の能力向上)を本気で考えてもらい、進んでもらいたいと思う。折口氏の常人を越えた突破力、集中力を持ってすれば可能ではないだろうか?

コムスン事件からの教訓
*「センターピン」を間違えずに、徹底していく力に磨きをかける
*今ある仕事の中から、次なる大きな戦いで勝つ為の「わらしべ」を見つける
*センターピンを見間違えるな
*「理念」を忘れてはいけない。「儲けや損というお金」と「理念」を天秤をかけないといけない時がいつかくる。ここで理念が試されるのだ。