誉めることは、叱るよりカンタンな事なのか?
朝食時に、ズームインを見ていたら、「誉めあいボード」という特集をやっていました。
この「誉めあいボード」をやっているのは、伊勢丹。同僚に関する感謝の気持ちや、仕事で気づいたいい点を書くボードが設置されているそうです。
一年前から伊勢丹アイカード全店で実施されていて、
「もらった時はすごい嬉しくて、その日一日が明るくなってきます!」と、従業員からも好評で、離職率が9%改善したそうです。
ネットで調べたら、14日の日経新聞にも同様の記事が掲載されていたそうです。リーダー育成36――こういう時代だからこそ褒める技術を磨け - 佐藤直曉のリーダー研究所 によると、記事の内容は、こんなことのようです。
伊勢丹浦和店では、「褒めあいカード」なるものがあって、月1枚は同僚の良さをカードにしたため贈り合う。それを「褒め愛ボード」に貼り付ける。
「荷物を床に置こうとしたお客様に、すぐいすを用意。素晴らしいです」
こんな内容のほめ言葉をかけあうらしい。社員には「褒められるとモチベーションが高まる」と好評だそうだ。
就職活動をひかえた学生向けのセミナー会社では、参加者同士でおたがいの長所を褒めあうことをする。
別のセミナー会社代表は「特に若者に自信がもてない人が目立つ。褒めないと勇気がもてず、就職活動や会社を辞めてしまう人が多い」と言う。
焼き鳥チェーンのオーナーは、「若者は注意するより褒めた方が『自分の仕事を見ている』と実感し、がんばれるようだ」と言う。
だが、と日経記事はここからつづける。やりすぎのようなこともあるというのだ。
パソコンに名前や性、年齢などを入力すると、画面を閉じるまでほめ言葉が現れ続けるサイトがある。最近は1日15万件のアクセスを越えることも。もっとも、入力した人は「救われた」と感想を寄せる。
一部では、褒めすぎが反骨心などの喪失につながると、懸念する声もある。
なぜそうまでして褒められたいか。白梅学園大学の汐見学長は「自分に自信のない人を褒めても効果は一時的。企業などはやみくもに褒めるより、本人が自信をもてるように育てることが大事では」と。
「いざこざを避けるために、安易に褒めている面があるのでは」という人もいる。
安易なほめ言葉に慣れた人は、もはや叱れないのではないか、という不安を感じる向きもある。
セミナー会社の代表は「実は不景気になってから、管理職にしかり方を教える研修の以来も増えている」といっている。
記事は最後にこうまとめている。
「ほめ言葉で元気になるのはよいけれど、そのうちしっぺ返しがくる?」
ズームインでも(横に叱ることで有名なセルジオ越後さんがいたので気を遣ったのかも知れませんが)、誉めることと同時に叱ることが大事みたいな話をしていました。
これらのメディアが代表するように、多くの日本人は「誉める」ということより、「叱ること」の方が大事と考えている向きが多いと思うのです。「誉めることはカンタン」であり、「叱ることは、難しい」との考え。だから、必ず、誉める話の重要性をした後、「誉めてばっかりではやはりダメですので、しっかり叱る必要がある際は叱らなければいけませんね。」などと余計なことを言う。
「誉める」ということは、それ程カンタンなことなのでしょうか?
私は、「誉める」とは、大変難しいことだと思います。
叱ることは、イヤなことをされたり、ひどいミスが目に付けば、頭に血が上り、無意識のうちに叱ることはできるのですが(よい叱り方かどうかは別として)、誉めることは、かなり意識しなければ難しかったりします。
私が誉めることが難しいと考える理由は3点です。
一つが、誉めるところを探す習慣が必要なこと
2つめが、自分は、人をよく誉めているという誤解
3つめが、誉めることへの照れ。後ろめたさ
一つ目の、誉めるところを探す習慣について。
特に難しいのが、トラブルを起こす部下、出来の悪い部下、言うことを聞かない部下の良いところを探すことは、難しいということ。(部下を子供と置き換えて貰ってもいいかもしれません。)これらの部下は、「悪い点」ばかりが目に付きます。
また、このように景気が悪いと、チームの業績も悪くなる。そうなると、よい部下にさえも、問題点ばかりが目に付くようになります。
悪いところばかりに目が行くので、誉めるのではなく、小言が多くなってしまいます。
そうなると、私達の目には固定観念というモノが出来てきます。悪いところばかりが目に付くようになってしまう。いい所を見逃すようになっていくのです。そうなれば、よほど意識して、「いい所」を探そうとしないと、誉める機会を失っていくことになるのです。
2つ目の理由、自分は、人をよく誉めているという誤解
『部下の「やる気」を育てる!』をベースに、「リーダーズモチベーション研修会」を私の会社では行っています。そこでは、「部下をモチベーションアップしていけるリーダーになるには、どうやればいいか?」という手法を演習等を交えて学んで頂いています。
そこにたくさんの管理者や経営者の方々がご参加されます。その中で、「誉める」という演習を行っていくのですが、案外、ほとんどの方が苦労されます。
10分間、相手を徹底して誉めるという演習があるのですが、ひどい人になると、10分間の間に、たった3つ位しか誉めることができなかったりしています。本人は、誉めているつもりなのですが、客観的に周囲が聞いていると、誉めていないのです。
また、研修の前に、アンケートも取るのですが、「誉めている」という部分への評価は、みなさん低い結果になってもいます。
人は、自分が思っているほど、周りを誉めていないのです。(私なども、子育てで、常に実感しています。)
3つめの理由は、誉めることへの照れ。後ろめたさという部分。
誉め慣れていないということもあるとは思うのですが、誉めるとなんとなく照れたりしませんか?また、おべっかを使っている、ゴマすりをしているように部下から疑われないかなどと、へんな後ろめたさがある人がいます。
これなどは、慣れができれば変わってくると思うのですが、実際に多くの人にこのような傾向はあると思うのです。
以上3つの理由もあって、実際に、誉めることは、案外難しいことだったりするのです。
この伊勢丹の「誉めあいボード」「誉めあいカード」などの取り組みは、「誉めるのが難しい3つの理由」を乗り越えるためにも、たいへんいい仕組みだと思うのです。
「誉めなければいけない」という仕組みを作ることで、誉めることへの照れ、後ろめたさがなくなります。ルールなのですから。
そして、「誉めあいカード」や「誉めあいボード」を作ることで、「自分がどう誉めているか?」ということが見える化されることになります。見える化されることで、「案外、自分は誉めていない」ことに気づくことにもなります。
そして、この仕組みがあることで、「誉めることを探そう」とするようになることです。誉めることを見つけることができなければ、「誉めあうカード」は書けないのですから。その誉めることを探す習慣が、プラス思考を組織に定着化させていくことになると思うのです。
この景気が悪い、業績が悪い時だからこそ、暗くなった組織の雰囲気を変えるために、「良いところ」を探す文化が必要になってくる。「誉めあう文化」ができれば、仕事も楽しくなり、職場も楽しくなる。善の循環が回り始める。
皆さんのチームでも「誉め合いボード」「誉めあいカード」を導入してみませんか?
- 作者: 小林英二
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2008/09/15
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