知ること、暗記することではない?WEB時代のプロフェッショナルの学習とは?
昔、故植木等さんが「分かっちゃいるけど、やめられない!」という歌を歌っていたのを覚えておられるでしょうか?含蓄のある言葉ですよね。これ、別の言葉で言うと、「分かっているけど、できません!」ということ。分かるとできるは違う。
しかし、私達は、分かった瞬間に「自分はできる」と勘違いしてしまう。実はこれって物凄く怖い話だと思いませんか?分かった瞬間から、それについてもっと知ろうという努力しようとしなくなるんですね。同じ事を何度も言う上司。知っている事ばかりが書いてある本やブログ、セミナー。これらに出会うとモチベーションが下がります。「そんな事くらい知っている。今更・・」
皆さんもそうだと思いますが、逆に「自分が知らない事、新しい事」を知ることは、とっても楽しい。本やブログを読んで、「えっ、そうだったの?」とか「新しい視点だ!」とか感じる事に出会えた時、美味いモノを食ったときや自分の夢中になるものをしている時以上に大きな喜びを感じる事ができる。新しい事を知る事は、大きなモチベーションアップの要因でもある。
では、知っていることに出会った時はどうだろうか?私を振り返ってみると・・本やブログ、セミナー、研修等の「新しい知」を提供してくれる場面がある。私の得意分野の話、例えばハイコンセプトについて書いてあるブログに出会ったとする。そうするとモチベーションが下がってしまい、つい、「そんな話は知っている。当たり前の話だ。読む必要はない!」と感じてしまう時がある。酷いときは、「そんな当たり前の事書くなよ」とか思ってしまう時もある。
実は「そう感じてしまう私」を私はは危険だと思う。「知ってる、知ってる症候群」にかかり始めているのだ。
「知ってる、知ってる症候群」とは、「薄っぺらな事しか知らないのに、何でも知っている」と思う症状だ。ネット社会の今、情報との出会いは非常に多い。その為に、知らず知らずに一つ一つの情報と薄っぺらい付き合いで終わってしまう場合も多い。
例えば、「孔子」「論語」って知っているか?と尋ねると、たいていの人は「知ってる。知ってる」と答える。詳しく読んだ事はないけど、アウトラインは知っていると、「知ってる。知ってる」という話になるのだ。「知ってる」となると、今更、その話を詳しく聞こう、読もうというモチベーションが下がってくるのだ。刺激が強いように脚色されたブログや本、等の情報にはモチベーションアップされるが、「少しちょっと知ってる」情報からは遠ざかってしまいがちになる。
危険なのは、一度薄っぺらい情報でも知ってしまうと、「知ってる」と思い込み、目や耳に遮断壁」を作ってしまう事ではないだろうか?ホントに詳しいプロフェッショナルからみると全く知っていないにも関わらず、それを詳しく知ろうとしないのだ。養老猛風に言うならば「知ってるの壁」を作るのだ。私も含めてだが、そんな人が増えているように感じる。情報の海にさらされている我々が陥りやすい罠なのだろう。
ネット時代は、「単に知っている事」は意味がない。グーグルで検索すればいいのだから。物知りの価値は下がってきているのだ。私が「知ってる症候群」に陥らず、「知ってると感じる情報」に出会った際にモチベーションを上げる為のTIPSを一つご紹介。
それは、「知らない事」「分からない事」を知ろうとする事。既にあなたが知っている情報に再び出会ったら、それについて、自分が知らないことが何か?それについて分からないことを探してみることです。
さっきの孔子の話で言うと
これを知る者は、これを好む者に如かず。(しかず)
知っているより、好きな人間が仕事ができる。
これを好む者は、これを楽しむ者に如かず。
好きな人間より、楽しむ人間が仕事ができる
という記述があります。そうすると、「孔子は、なぜ仕事が好きな人と仕事が楽しむ人を分けたんだろう?」と考える訳です。(詳しくは、 「仕事を楽しむ」と「楽しい仕事をする」は違う!に)
知っていると思っている事でさえも、それについて「知らないこと」「分からない事」を考えてみると、意外に「知らないこと、分からないこと」が多いモノです。それが分かると、退屈に思える話にもモチベーションアップがされていきます。一段、深い学習ができると思うのです。
グーグルがどんなに発達しても検索できないものがあると思います。それは、「あなたが知らない事」。あなたが知らないこと、あなたの問題意識は、あなたしか知ることはできないのです。どんな情報化時代になっても。
単に知るだけだったら頭はあまり使う必要がありません。受け身でいいのです。しかしあなたが知らない事、あなたが疑問に思うことは、あなたがそれについて深く考える事でしか生まれてきません。知らないことを知るという作業はクリエィティビティが求められるのです。WEBが更に進化していった時代では、「それについて知ってる事」より、「それについて知らない事をどれだけ知っているか?」「分からない事をどれだけ知っているか」が大事なのではないでしょうか?
茂木健一郎さんが無印良品のデザイナーさんについて講演で話をされている中で、興味深い話がありました。無印良品は基本的に無地の白ばかり。その「白」を徹底追及されているデザイナーの方は「白を知れば知るほど分からなくなる」と言われているそうだ。白といっても色んな白がある。素材によっても白の出方が違う。白がいきてくる組合せがある。白と他の色のバランス等々。プロフェッショナルは、私のような素人では考えもつかないような「白」に対する疑問が出てくるのだろう。
その話しを聞いて確信した。真のプロフェッショナルとは、「知らない事をどれだけ知っているか?」が鍵になってくるように思える。「知ってるの壁」を取り外して、退屈な話と感じても、知らない事を知ろうとする事でモチベーションアップを図っていきましょう!
私が良い記事と思っているけどあまりアクセスのない7/10分の『プロフェッショナルは知らない事を知ってる』というエントリーを再編集させて頂きアップしてみました。