給料を増やせない時代だからこそ考えたい。社員の幸福を中心とした経
最近アメリカで注目されているマネジメント手法として
「サイエンス オブ ハピネス」というポジティブ心理学を基本理念に置いた経営があります。
科学的に研究された幸福を実現する為の経営ということ。
(誤解ないように言っておくと、日本にある宗教団体とは全く別物です。)
代表的な企業に、ザッポスという靴のインターネット通販を行っている会社があります。
ザッポスを取り上げたビジネス書は日本でも数多くあります。
一冊ご紹介しておくとCEOのトニー・シェイが書いた
「―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか」という本。
顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか
- 作者: トニー・シェイ,本荘 修二,豊田早苗
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2010/12/03
- メディア: 単行本
- 購入: 15人 クリック: 250回
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ザッポスは、米オンラインシューズ市場で30%を越えるシェアを保有しており、アマゾンが三顧の礼で800億円で買収した事で有名です。ちなみにアマゾンはザッポスの経営に一切口をはさまいという契約のようです。
この発想は、
「企業の成長、成功は社員のやる気と成長にかかっている。
成長(成功)する社員とは、働く事に幸福感を感じている社員である。
だから、徹底的に社員が幸福感を感じる職場を作る」
ということです。
一般的な常識であれば、
「成功(成長)した結果としての果実として、幸福を手にすることができる」
ということですが、
最近のサイエンスオブハピネスの研究結果では、その常識は間違っており、
「現状に幸福感を見いだしている人が、成功する」という事が
逆の事が数々の実験から証明されています。
ザッポスの社長トニー・シェイは常に
「人を幸せにすることが企業にとって最強の戦略だ」と言っており、
これをもとに会社が構築されています。
トニー・シェイは、もちろん共産主義者でもなければ慈善家でもありません。
ビジネスマン、経営者です。
人を幸せにする会社を作る事で、様々なビジネスの計算をしています。(効果、コスト削減、売上効果等々)
「人を幸せにする」を中心にしている会社を作れば、
- ・会社と共に社員は幸福になろうと懸命に働いてくれるし (生産性UP)
- ・いろんなアイデアを自主的に出してくれるし、独自サービスを開発してくれ (売上UP)
- ・監督コストも低くて済むし (管理コスト低減)
- ・文化が人を育ててくれるので教育コストも低くて済むし (教育コスト低減)
- ・そんなに高い給料を払うわけではないので、人件費も抑えられるし (人件費抑制)
- ・評判をもとに、高い給料で釣らなくても素晴らしい人材がどんどん入社を希望してくれる。(採用コスト減、生産性UP)
- ・創意工夫をする社員達が「最高のサービス(ザッポス伝説)」を提供してくれるという事で、どの企業にも真似ができないマーケティング面でも素晴らしい独自性を発揮する。(売上UP)
- ・また「人を幸せにする会社」という評判がクチコミで広がるので、広告コストが削減できる。(広告コスト削減)
というワケです。
社員からも喜ばれ、顧客にも喜ばれ、会社も儲かる仕組みとして
トニー・シェイは「サイエンスオブハピネス」を中心にした経営を行っているのです。
それでは「サイエンスオブハピネス」を中心にした経営とは、どのようなものか?
をちょっとだけご紹介していきましょう。
人が幸せを感じるとは、どのような時か?
よく「宝くじに当たった時」と言う人が多いのですが、実は違います。
「高額の宝くじに当たった人」を追跡調査した結果、
当たった当初は彼らの幸福感は高まりますが、
1年後には、一般の人と同じ程度の幸福感に下がってしまうという事
が調査結果で証明されています。
そのような「快楽」は、
インパクトは強いが、時がたてば色あせていき、当たり前になり、
幸福感を支えるものにならない。
また経営的に考えても、「快楽」の提供は金がかかりすぎます。
コスト的に合いません。
ウォールストリートのビジネスマンへの報酬のように、
何十億円の給料を払っても
瞬間的には喜ぶだけで、すぐに更なる賃金Upを求められます。
このような土俵を一端作っていくと、
際限がない人件費の高騰に繋がっていく、チキンゲーム状態になっていきます。
では、長続きする幸福感とは何か?ということで
サイエンスオブハピネスでは4つの精神的幸福を追求していく事を勧めています。
- 自由に生きていると感じるか? (自由さ)
- 自分が成長していると感じるか? (成長)
- 他者と深く、多数の繋がりを感じている? (関係)
- 自分、自分の人生に大きな意味を見出しているか? (意味発見)
快楽ではなく、
4つの精神的幸福を、
会社で、また働くことを通して提供していこうとするのです。
例えば、ザポスでは「自由さ」を社員に感じて貰うために
次のような制度を一つ用意しています。
・20のスキルセットを導入(ボーイスカウトの技術章のようなもの)
・スキルセットに対して、それを覚えていけば少額の昇給が行われる
・どのスキルセットのトレーニングを受け、
認定して貰うかどうかの判断は個人に任せる
・意欲的で20スキルをすぐに取りたい人には、それを支援するし、
必要ない人は給料そのまま
・自分でキャリアプランを選べる。会社の中での生き方を選べる
これらのような「4つの幸福感」を感じる為の制度が、
会社の中にたくさん用意されているのです。
この例のように「社員の幸福を追求する」といっても、
実は、コストが大きくかかるものではないものバカリだったりします。
まさに、経営者としての工夫ですね。
「金」を使ったモチベーションを中心に行っていたアメリカでは、
リーマンショック以降、その武器が使えなくなった。
その流れで着目されはじめたサイエンスオブハピネス中心のマネジメント。
窮することで、工夫をするようになったのですね。
日本でも給料UPの原資が厳しい時代。給料が出せないのなら、代わりにこのような経営手法の導入が必要になってくるのではではないでしょうか。