モチベーションは楽しさ創造から

自分自身のモチベーションアップ、仕事を楽しくする方法から、部下・上司・顧客のモチベーションアップのヒントとなるノウハウ、コラムをまとめたブログです

よく人が辞める職場のリーダーは、何が間違っているのだろうか?

人間関係に悩んでいる人がサラリーマンにはとても多い。私もサラリーマンの時そうだった。モチベーションアップは楽しさ創造から - 部下や後輩があなたを嫌う 10のワケでも述べたが、社員が辞める理由の多くは、上司との人間関係。上司が嫌いだから辞めていくのである。


その人間関係をややこしくしている大きな原因の一つに、リーダーシップやモチベーションについての考え方があるのではないだろうか?今、日本人が考えるリーダー像は、「闘将型」「戦国武将」「明治維新の際の志士」的な、睨みを効かせてガーンっというリーダーシップではないだろうか?言うことを効かないのであれば鉄拳制裁も辞さないという強い男のリーダーシップ(鬼の上司)である。


さすがに、企業内で鉄拳制裁するわけにもいかないので、本人は気づかないのだが、そのような人は言葉の鉄拳制裁を部下に行っている。言葉の鉄拳制裁といってもいろんなパターンがある。

  • 怒鳴り散らし、感情的な言葉、侮辱する言葉をはく人
  • ネチネチと長時間かけて追い込む人
  • いつも「ガンバレバ何とかなる」と精神論、根性論ばかりを押しつけてくる人
  • 等々

言葉の鉄拳制裁を行うには、バックボーンにそれの倍以上の愛情がないといけない。しかし、実際に言葉の鉄拳制裁をよく行っている人に限って、愛情や気遣いが薄かったりする。部下にしたらたまったものではない。そんなリーダーのもとからは、優秀な人材から辞めていく。こんな悲劇が今もどこかで繰り返されている。



モチベーション=動機付けと考えた時、人の動機は大きく2つである。

  • 痛みを避けようとする
  • 快楽を得ようとする

私たちの脳は、そのように本能がプログラミングされているのだ。動機付けに関わる「痛み」と「快楽」には2つの脳内物質が大きく関係してくる。一つが、痛みが発生した際に出るノルアドレナリン。2つめが快楽を感じたときに出る脳内物質ドーパミン動機付けとは、この2つを発生させていく事にあるとも言える。

言葉の鉄拳制裁を振るうリーダーは、ノルアドレナリン型モチベーションの信奉者でもある。

人は痛みや恐怖を感じると、脳内にノルアドレナリンを分泌する。そのノルアドレナリンを使用しながら、人は「痛みからの逃避」か「痛みとの闘争」という行動に入っていく。(危険なライオン等の動物に出会った時のとっさの本能的な反応ができるのは、恐怖によるノルアドレナリンの分泌のお陰。)

このノルアドレナリンの分泌は、瞬間的には、強いモチベーションになり、人を行動に駆り立てる。(瞬間的爆発力の観点で言えば、痛みの恐怖は、快楽を求めるモチベーションよりも人を行動に駆り立てます。)人間が適者生存で生き残る事ができたのも、このノルアドレナリンが出る仕組みがあったからだろう。

企業の中でこのノルアドレナリン型モチベーションはかなり多様されている。例えば

  • 業績給によるモチベーション(多くは賃金が下がる恐怖の方がモチベーションとして左右している)
  • 社員への管理強化・会議での叱責、怖い上司
  • 朝礼や会議での激!
  • 数日間の気合いを入れるための研修会
  • 自分の問題点を嫌気がする迄見つめる研修会

これらの効果は、多くの企業で実証済みだろう。私共でも、実際に研修会等も行わせて頂いている。ノルアドレナリン型モチベーションは、ドーパミン型モチベーションより即効性が高いので、これを好まれている管理者も多いのだ。「私のカツであいつが変わった!」「あの研修で劇的に変わった」といういような、部下を瞬時に変化させる成功体験を積まれた方も多いのではないか?しかし、問題は持続性。ノルアドレナリン型モチベーションは、「ここぞ!」という場面では、使ってもいいのだが、劇薬だ。

なぜ、劇薬なのか?長く使い続けるといけないのか?
痛みが続くと、ノルアドレナリンの使いすぎにより、痛みが麻痺状態になっていく。やがてその痛みが当たり前になり、痛みや恐怖がモチベーションとして機能しなくなり、無気力行動になってしまうベトナム戦争に行っていた帰還兵が戻ってくる廃人のようになったというようなエピソードなどもこれらが原因と言われている。

よく、闘将と言われるスポーツ監督の業績が瞬間で終わるのは、その為だ。1年〜2年はその監督が指揮をとると、劇的に組織は強くなる。しかしその後、組織構成員が疲れてきて、無気力的な状況になるのだ。プロスポーツチームの監督のように短期間勝負であれば別だが、長期の利益管理が仕事になる一般企業の経営者や管理者がこのノルアドレナリン型モチベーションに頼るのは危険だ。

例えば、営業が苦手なIさん。彼に電話営業の仕事が命令されたとする。

Iさんの脳には、命令と同時に、ノルアドレナリンが分泌され、「イヤだな。他の仕事で忙しいと言い訳して、電話営業をさぼれないかな?」(逃げる)とか「イヤだな、苦手だけど仕事だから仕方ない。とりあえず電話営業を頑張るか?」(戦う)と考える。「電話営業を避けようと、さぼってしまえば」(逃げる)とそれでIさん成功への道が閉ざされていく。上司から怒鳴られる恐怖も容易に想像できていく。

しかし、Iさんが「イヤだけど我慢して、とりあえず電話営業しよう」(戦う)と考えても、あまり明るい未来はない。瞬間的には頑張れたIさんだが、それが長期間にわたり、「仕事=電話営業がイヤだな」と考え続けていくとどうなるか?
ノルアドレナリンの使いすぎにより、「頑張って仕事を乗り切っていこう」とする気持ちを継続する事ができなくなる。そして、仕事への無気力状態に陥ってしまいます。更に、いつも小さな事でイライラして集中力もなくなり、周りの人からも敬遠されていき、成長へのチャンスも減っていく。

ノルアドレナリン型モチベーションを多発すると長期的には組織は沈滞化してしまう。効果がある事も確かだ。しかし劇薬だからこそ、上手な使い方が必要になる。最も怖いのは、この劇薬は使う側に中毒をもたらす事。上司がノルアドレナリン型モチベーション中毒になれば、その組織は中長期的には崩壊していく。恐怖で人を長期間管理し続ける事はできないのだから。退職者が続出し、社員があきらめムードになり、自分で考えようとはしなくなっていく。そしてノルアドレナリン型モチベーションの効果の効き目がどんどん短期になっていく。「以前は1回怒鳴れば3ヶ月くらいピリッとしていたのに、今は3日くらいしか効果がなくなった」と言った結果になるのだ。

兵法で言えば、ノルアドレナリン型モチベーションは「奇策」にしかすぎない。「正攻法のドーパミンを発生型モチベーション」が「ノルアドレナリン型モチベーション」に真の効果をもたらすという事を覚えて置く必要がある。

火事場の馬鹿力がどうしても必要な時以外は、、ノルアドレナリン型モチベーションを使わないという覚悟が管理者には必要になってくる。これを人を管理していくポジションにある人達に、教育していく必要がある。
劇薬が誘惑していきますから・・
カンフル剤をいつも使っていたら、肝心な時にも使えなくなる。

あなたの会社にいませんか?ノルアドレナリン型モチベーション中毒患者の管理者が・・